ビジネスで訪れたアラスカのメジャー基地は別世界

10年以上前のことですが、私は某鉄鋼メーカーのロスアンゼルス事務所長をしていました。

メジャーオイルの一角を占めるシェブロン社のサンフランシスコ本社には、商談のため定期的に通っていました。そこの購買担当副社長K氏と親しくなり、ある時彼からアラスカにあるシェブロン社の石油生産、精製基地を訪問しないかと打診がありました。

ビジネスというよりはむしろ、基地内の施設へのご招待でした。商社M社のロスアンゼルス支店の人と、ビジネスではなくプライベートで行くことに決めて、3月に春休みを取り3日間の日程で訪問しました。

ロスアンゼルス空港から北へ約4時間、所々が氷で覆われたアラスカ大陸が見えてきました。デッドホース(死んだ馬)空港を目指して飛行機は、徐々に高度を落としました。滑走路にはうっすらと雪が積もっていました。軽いショックを感じながら着陸したのですが、再び離陸してしまいました。同行した商社の人が「ブレーキが利かず、停止出来なかった」と説明してくれました。急に不安になりました。

ところが旋回して再び着陸しましたが、今度も停止できずまたもや離陸してしまいました。「心配ない」という趣旨のアナウンスが流れていました。幸い3度目に何とか着陸、心から安堵しました。

迎えに来てくれたシェブロン社の人は「3度目で着陸出来たなんて、あなた方はラッキーだ」と笑みを浮かべていました。空港から車でプルドーベイ(プルドー湾)近くの基地まで約1時間のドライブでした。周りは殺伐として、エスキモー人のお土産屋があるくらいでした。

ところが基地についてびっくりしました。突然立派なビル群が出現したのです。高い天井はガラス張りで、熱帯の植物が生い茂り、「別世界」に迷い込んだ錯覚に陥りました。居住地区とビジネス地区に分かれており、約3000人の従業員がいるとのことでした。ここで1年間働いた人は、サンフランシスコに戻って、3ヶ月の休暇が取れるとの説明を受けました。

メジャーオイルが従業員の「福利厚生」を如何に大事にしているかがわかりました。逆に言えばここでの、石油の採掘、生産、精製作業がいかに過酷かの裏返しだと感じました。

我々は居住地区で、それぞれ部屋をあてがわれ、エアコンが効いた快適な空間と、大きなビフテキやおいしいワインで歓待を受けました。翌日はビル内にあるプールで泳いだり、ゴルフのボールを打ったりしました。ビルの中はまさに小さな町で、様々な設備が整っていました。

最後の日は、石油掘削現場に行って、プラットフォーム(石油を取り出す装置の付いた大きな構造物)に上りました。海面まで30mはあろうかという巨大な構造物でした。今振り返ると、本当に得難い体験ができたと思います。

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